つ ぎ   さ き  もう じゃ
旅時裂期亡者

シャシャッ!

次々と見え無き影は音を立てて走り抜けるが、誰一人として気がついてはいない。
オデコロンや、シネマの目の前にも平然と通り過ぎるのに、見えない。

ゲキガスキー御得意の、姿隠しの技らしい。
その手段は、ゲキガスキーの命により、私ナレーターにも知らされていない。

 

「まだ来ないわねえ。」

「どうしてでしょうか?」

 

リップとパフは顔を見合わせる。

前回、大胆にも脅迫状ならぬ予告状が警察の署長当てに届いたのだ。
その内容によると、今度は『お出かけフクブクロ』を頂戴するというのだ。
このマシンを奪われては、今後、『お出かけキャット』のみで奴ら、イタリアントリオを追跡せねばならない上に追うべきタイムマシンが2台に増えるという、非常に厄介な話なのだ。

とその時、パフの腕時計型通信機から警報が鳴る。
同時に、リキッド博士が姿をあらわすや怒鳴りをかけてくる。

 

『なにをしとるんじゃお前さんたち!お出かけフクブクロはどうなったんじゃ!』

 

だが、その声もとある爆発音でかき消されてパフたちには聞こえていなかった。
それもその筈、バリンとガラスが割れる音と同時、途端に警報機が腕時計型通信機の音と重なっていた為に聞こえていなかった。

 

『おい、お前さんたち、返事をしろ、おいってば!』

 

気付かず、派手に大きな音のしたガラスの割れて警報のなる方角にしか動いていないパフたち全員。
言うまでもなくリップとパフの2人ともだ。
行動がバラバラであるというか、一方向、同一思考のコンビとしか言えない。
がらんとして誰もいなく、忍びには格好の場所と化していた。。

 

「やりましたね、リンゴ様ああ。」

「せやせや、リンゴ様頭が好いでんなあ。」

 

裏手口からはこんな2人の呟く声がする。
ルージュとオンドレーだ。
ドックリンゴやヒエールよりもいち早く回っていたのだ。
ヒエールとリンゴは表からの堂々侵入でコンビを組んで、勢いよくガラスを割って発煙弾を投げ入れる役目だった。

 

「さぁ、あの2人のことだ。多分、我を忘れて走って落としているかもしれないでミリン。」

「さすがリンゴ様、抜け目の無い考え…。」

「そういうおみゃーさんも、もっと抜け目の無い男になるでがよ。分かったがよ?」

「どうでもいいけど、こんな所でまで説教しないでほしいなぁ。」

 

ここで説明しよう。
何故この二人が組んだのかというと、一応、血の繋がっているからでである。
そして信じられない事に、ヒエールの××代目の孫に当たるのがドックリンゴ。
しかし、リンゴがこれほど優秀であることはどこか可笑しいような気がしてならない、どことなく違和感が沸いたものだった。
二人は、これ以上姿は隠すことは無いとばかりに、術を解いて現世の人間に見えるようにする。

パフたちが張り込んでいた辺りを目掛けて小走りする。
途中をキョロキョロと見回しながら、下にも注意する。 万が一、2人がお出かけフクブクロを収納型にしたまま廊下に落として行っていないかという理由からだ。
それも何を隠そう、落としているようなら…とものドックリンゴの考え。
というか、『このボカンワールドでは、そういう有り触れたネタがよく有り得る』とドックリンゴが定義的なことを学習しているのだ。

 

『そのコロ

 

「しかし、夜目は辛いわよねぇー。」

「まったくでんな。猫でもいれば、話は別ですねんけど。」

「このスカっ!お出かけキャットでも思い出しちゃったじゃないか。」

「スマナイで、ですねん。」

 

2人はこんな会話をしながら進んでいたが、その通りであった。
彼らと鉢合わせしないようにソロリソロリと歩くルージュとオンドレー。
が、思わずオンドレーの言葉にギクリとしたのは言うまでもない。
説明するまでも無いが、何せ、お出かけキャットがトッタルニャンに変身するのを旧・花の刑事トリオ…つまり現・イタリアントリオを知ってから。
このような理由から、キャットを見なくとも聞いたりするだけで、『パブロフの猫』なる連敗を気にしているのである。

 

「もう〜余計なこと言うんじゃないよ。思い出しちゃったじゃないか。」

 

ルージュの声を他所に、そこ、廊下の窓に丁度誰かの顔が目に付いた。
良く見ると、シネマが片手をポケットに突っ込んでライトを照らしながら歩いているのだ。
つまり、シネマは外の担当だったのである。

 

「やばっ!」

「ん?」

 

もう少しで顔を合わせそうになったルージュ。
オンドレーの背中を上から押さえつけながら自分も体ごと伏せる。
だが、思わず声と同時にしゃがんだが為、なにやら気が付かれたがようにルージュは感じて仕方が無かった。
そんな嫌な気がしたままやり過ごそうと、口に手をあてるが、オンドレーは無神経に少々大声で話し掛けてくるのだ。
本当、困った奴である。

 

「あのルージュ様ぁ、こんなとこでワイを押し倒して、ワイにでも気があるのでっか?」

「(こぉのスカポンタン!せめてもう少しトーンを抑えなさい!)」

「ええっ、ワイに『とんがりコーン』食わしてくれるのでっか?」

「(も、もういい黙れ、アンタは!)」

 

こんな2人のやり取りにも何か気付きかけているようにも見えた。
シネマは不思議がってその外から窓越しで廊下を見やるところだった。しかし………!

 

「んん?隣の家でなにか面白い番組でもやってるのかな?面白そうなサスペンスかなぁ、今日の番組欄は、えーと……。」

 

「「(コケ−−ッ!)」」

 

なんと、シネマが片手をポケットから取り出して見たのは『週刊テレビガイド』の切り抜き。
そんなモノを片手に宿直室でテレビを見るつもりだったのだろう。
しかし、なんて緊張感が無い展開であっただろうか。

というわけでかたや器用に、音を立てずにひっくり返るルージュとオンドレー。
しかし、そこにオンドレーは丁度良くなにやらボールを見つけたのである。
だが、夜目ではあることに変わりは無く、そのボールが何色をしているかがはっきりとわからなかったのでとりあえずルージュに報告した。

 

「(あのぉルージュ様。こんなん見つけましたでえ。)」

「(なんだいそのボール。ひょっとして、それがお出かけフクブクロだとでも言うのかい?)」

「(だからもしかしたら、これが携帯状の姿かなーと思い、ルージュ様に聞いてるンや。)」

「(だったらね、それは保留しといてどこかにしまっておいでよ。こんなとこで開いて彼らに見つかったら厄介な事に…)」

 

まだもトーンを落として喋るルージュに合わせて、オンドレーも辛うじて声を落とす。
そう、途中の廊下で停止したまま、2人は相談…というか、話し合いをしていた。
だがそこへ、迫り来る黒い影があった。2人はまだ気がついていない。

 

その頃、ドックリンゴとヒエールの方はと言うと、既に落ち合い地点に着いていた。
ドックリンゴの本来の能力と言う理由もあるが、ヒエールの製作した高性能探知メカの助けもあってか、手間取る事もなく進めたのだ。 平たく言えば、探知メカが高性能だけあって───

 

「そうなのよナレちゃん。人物もある程度探知できる優れものなワケなのよ。」

「さすがは、私の先祖だがね。」

「おっと、おだてブタは出さなくていいのかい?」

「こんな所で出したら、目立って見つかるがね。」

「もう偉いよリンゴ様ぁ、さすがは私の×代目の孫だがね、」

 

よく読むと、ヒエールはリンゴの言葉が移っていた。 そして更に、最悪な事に2度の褒め言葉に思わずおだてブタも出るしかなかったのか、飛び出して発してしまうのだった。

 

『ブタも、おだてりゃ、木に、登る〜〜〜〜』

 

ブウッ!
と、しかも最後に決めの豚の鼻鳴らしが炸裂し、その場をオデコロン署長他の見張り達に見られたのである。
まさに最悪の事態に陥ろうとしていた。

 

「ああっ、おだてブタだ!」

「ってことは、イタリアントリオがいるな!」

「追え追え、追え−−っ!」

 

「や、やばい、早く行きますよリンゴ様。」

「そうだがね、でもワテは早く走れませんでんがね。」

 

そう、リンゴは大泥棒である事には変わらないのだが、体力的にはルージュ達よりかなり劣っているのだ。
それらは、未来では頭脳でカヴァーしていた為に問題はなかったのであるが、この現代界では「爆発」になれた彼ら3人より 劣っていたのには変わらず、その差は広かったのだ。

というわけで、走るには走ったが、見る間に追いつかれていくのが目に見える。
そこで、リンゴはすかさずメカに頼ろうとヒエールにメカを呼ぶよう要請していた。

しかし、ヒエールには、パフの乗る「お出かけキャット」がスピード的にパワーアップして早くなっている事も 熟知しており、その要請は直ぐには受け入れられなかった。
先ずは、何とかして姿を撒いて、その後にルージュとオンドレーの2人と合流点で落ち合わねばなるまい。

だが、落ち合い場所には、既にリップやパフが張り込んでいる可能性が高い。
それをヒエールは見通してルージュの携帯電話にメールを回すことを思いついた。

 

ブルルル…と携帯電話が振動してキーを押すルージュ。
マナーモードという音断絶機能に、エニーキーアンサーというどのキーを押しても受話状態に出来る機能を搭載した、 今なら誰でも知りうるタイプの携帯電話をフル利用しているのだ。

 

「どうしたんでっか?」

「…簡易なメッセージが来てるよ。なになに、  『ハッケンサレ オチアイバショヘンコウ。キタグチ10ホサキノカナアミマエ』 ですってよ。」

「ドジ踏み寄ったな。ようし、早速これを確かめて乗ってみるネン。そうすりゃ…」

「なるほど。」

 

というわけで、オンドレーは素早くそのボールを転がすなり、ボールは点灯し始めた。
ボールの点灯する二つの目を確認すると、大きくなっていく。

 

「パフ、あんたお出かけフクブクロはポケットの中よね?」

 

リップにそう言われてパフは手でポケットを探って気が付いた。
なんと……………

 

「ああっ、ポケットに穴が開いてる。てことは、」

「もうパフ。つまり落としたってことでしょ。じゃ間違い無くあれがそうなんでしょ?」

 

リップの指差す先にお出かけフクブクロが現れたのである。
はっきり言って、大ピンチになったのはどっちなのか分からなくなったのである。
さぁ、早くポリデッカーよ出撃せよ!フクブクロを無事取り戻すのだ!
ではまた、パフの自戒を期待して次回を待とう!



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