快傑ズバット 解説


ここでは、ラスト二話(31話、32話)について他サイトより詳しく解説しています。
尚、色の違う文は本編で省略された部分を私が推測して加えて見たものです。

  1. 快傑ズバットとは
  2. 第31話「対決!真犯人首領L?」
  3. 第32話「さらば斗いの日々、そして」
  4. 考察・神竜伸介とは  

快傑ズバットとは



……以上、簡単な流れ(設定)と内容で放送されるが、最終話の31・32話については内容が濃いため、詳細な流れを以下に記す。



第31話「対決!真犯人首領L?」

首領L、天海山三兄弟(竜山丸・竜海丸・竜天丸)

 飛鳥五郎の墓標を望遠レンズで監察しているダッカーの手下。 お参りに来たオサムとみどりを殺害しようかと考えていたところ、見慣れない美女の姿がレンズに写る。
 彼女は、飛鳥五郎の研究を引継いだ一人。ズバットスーツより10倍は協力な特殊繊維、シルベールの開発を成功させた旨を伝えに来ていた。 しかし、その現場を抑えたダッカーの三下どもは彼女を拉致して、ダッカーのために作らせようと一斉に取り囲んだ。銃口を向けると彼女は神社の境内へと逃げる。 そこを追い込み連れ込むのだが……銃が次々と小石で弾かれ、下へ落ちていく。 手下の振り返る方向には、早川 健が仏像の前で座禅を組んで大仏と同じポーズで座り込んで待ち伏せていた!

「虫ケラにも、色々あるが……よってたかって女を虐めるとは‥‥、虫ケラにも劣るゴキブリ野郎だぜ。
 そんな野郎は……虫の息でお寝んねしてるんだな!」

 言葉を一句一句区切りながら、言葉通りに、早川はツバを吐き捨て、ギターを武器に戦闘員を叩きのめした。  しかし、女性を助け避難をさせようとした背後には、ある男の声が。

「それはちょっと早すぎるんじゃないのかい?」

 早川はそのまま、振り向かずに聞き口を返す。

「お出でになすったな。謎の組織の用心棒、竜山丸。そしてマシンガンの名手…ただし!
 ……その腕前は日本じゃあ2番目だ」
「むぅぅー、2番目だと!じゃあ日本一は!」

 お約束どおり、聞き返したところへヒュウと軽く勢いよく口笛を吹き、チッチッチッと二本指をテンガロンハットのツバ辺りに振りながら舌打ちし、自分を指差しニマリ笑う早川。 そこで勝負が始まる。
 竜山丸は、杖に仕込んだマシンガンで早川が立った向こうにある墓石を早川の体越しすれすれに連射させる。 すると、見事に石は人型にくりぬかれ落ちていく。
 次に、早川に杖を投げ渡す…が、早川は空中でキャッチしたまま着地する前に銃を連射させた。 すると今度は、くりぬかれ落ちた石が最初の数発によって起こされ、残り全ての弾丸が起き上がった人型に命中、押し戻してすっぽり元通りにはめ込まれてしまった!
 だがその銃が爆弾仕込みであることを知りつつ、竜山丸は「次に俺を撃て」と仕向ける。 しかし仕向けられたその時、早川は「銃を捨てろ」と、謎の助言を囁かれ言葉通りに竜山丸目掛けて投げつける。
竜山丸はこれを飛び避け爆発から逃れるなり、「良くぞ見破った!」と言い殺し一時撤退していった。

 女性を連れて行く早川の前に、謎の老人が現れる。老人は避難場所として自分の家に招き入れるよう促すと、早川もその方がいいと安易に連れて行く。
家の中に入ると、老人はタロットカードが趣味であるという振りをしながらも、事の経緯を言い当て始める。 彼女の正体が飛鳥の恋人・皆川理沙であること、また早川の名まで言い当てるばかりか、謎の組織名がダッカーであることまで告げる。
 さらに、老人の家がダッカーに再び囲まれていることすらも老人は気付いたが、不審に思った早川は爆破されることを察し、 かろうじて女性と老人を外へ連れ逃げ危機を救う。

 そこへ車でかけつけてきた東条と出くわす。そのまま東条の車に乗り込み、理沙の宿泊・滞在しているというホテル清風閣に向かうことになる。 その途中、理沙はシルベールの試作品をお礼に早川に見せようとするが、早川と東条はそれを制する。ダッカーに何時見られるか分からないのもあるが、老人がどういう人物なのかと不審を抱いた。 そこへ、老人は笑う。

「何がおかしい!」
「東条、まだ分からぬか。オレだ、神竜伸介だよ。」

 そう言い、付け髭・顎鬚に鬘を外し変装を解いていき…その正体は東条の親友である、国際秘密警察であることを明かした。
 自己紹介を終え強力な助っ人を得たところで、アイキャッチを挟み、ついに後半、ダッカー本部へ乗り込んでいく。 が、途中、神竜が一時行方をくらましたかと思うと、腕を打たれ怪我をしながらも追いついてきた。 その神竜の怪我を按じ、一旦態勢を立て直そうとの判断で一時引き揚げることにした。

 しかしそこで意外な事実が明らかになった。 神竜の腕から取り出された弾丸というのが、飛鳥に撃ちこまれた弾丸と一致し、撃込んだ本人が、悪の大組織ダッカーのボス・首領Lであることを、神竜の証言から明らかになる! さらに、国際秘密警察が2年がかりで調べ上げ作ったという見取り図を神竜は見せる。 すると早川は一目見ただけで、警備・監視の薄い個所を三箇所も見抜いた。 彼ら三人は、お互いに人質に捕らえられた場合でも見捨てる事を覚悟しながら、その指摘した三箇所…ダッカー本部、警備の薄い場所に配置につくことにする。
 その通り、見事に進入成功!3人とも三下どもを軽々と蹴散らし、数々の罠をかいくぐる。 だがついに、早川の前後に鉄格子が降りて閉じ込められ、地の底に落とされていく。 そしてモニターを降ろされると、首領Lがモニター画面に映る。  言うには、残りの二人とも人質に捕らえたと、画面一杯に同時に写した。五分後には二人とも処刑にするとも宣告した。 だが、その時には、早川は既にズバットスーツを着用して身構えていた。

「二人には手を出すな!」

 とばかりに、鞭で壁に穴を孔けて館の外へ出ると、ついに首領Lの居る山岳へ目掛けて急ぐ。 途中、襲い掛かる戦闘員はズバットに軽々と叩き落とされ、倒れていくだけ。目的の場につくと、首領Lと対峙した。  首領Lは、山の上からズバットを見下ろし、ズバットの正体が穴から落ちた早川の変身した姿である事をついに確証したと伝えたが、ズバットも負けずに口上を決める。

「悪行の限りを尽くし…、数え切れぬほどの人を殺し…、あまつさえ、罪も無い飛鳥五郎を殺した犯人!許さん、首領L!」

 首領Lは手下の戦闘員を仕向けつつも、同時に、巨大なブーメランを山上から投げつける。 だが、あえなく空に舞い交わされ、同時に戦闘員を気絶させていくズバット。ブーメランを再度手に取った時には、山上へ寄り懐に入り込まれて、さらに一撃を浴びせられる。
 Lは山上を降り、平地で一対一の突撃を決め、互いに走りこみ一閃の対決へともつれ込む。 …だが、ズバットの攻撃が振り下ろされるブーメランよりも素早く、奥深くめり込み身を倒しかける。 さらにズバットアタックが三枚蹴りで繰り出され、首領Lはついに倒れ込んだ。その上に次々、散々と叩きのめされていく。

「飛鳥五郎の仇だ!」
「違う。飛鳥五郎を殺したのは俺じゃない!」
「嘘をつくな!」
「飛鳥を、殺した、真犯人、ダッ…カーの総統…」
「なんだとぉ!」
「本…当だ」
「ダッカーのボスは貴様ではないと言うのか!」
「ダッカーの総統の名は…」

ズバットに2度の尋問をされるが、違うと言い、総統の名を口出したところで射殺される。撃ったのは竜山丸だった。

「秘密を漏らすものは、ダッカーの決まりに乗っ取って死んでもらう!」

 竜山丸は、首領Lが言い残した続きを総統Dであることを明かす。さらに、5分も経てばズバットスーツはただの鉛の様に重くなるのを地獄組らから聞き出していたと話す。 さらに、竜山丸がダッカー最高幹部・天海山三兄弟の一人である事実を自ら述べ、時間稼ぎの術にはまらせた! そしてついに、残る二人の竜海丸・竜天丸が揃うのを許してしまい、5分という限界を越したズバット。
 三兄弟のマシンガンの嵐を一斉に浴びるしかなかったが、機転を利かせ、器用にも岩を盾にスーツを脱ぐのに成功した。しかし、逃げる分には状況は変わっていない。
 一方、首領Lが居なくなったにも関わらず、東条と神竜は手下に拉致されたまま。5分のリミットもとうに過ぎてしまい、崖上の吊橋の上に連れてこられ2人とも処刑されようとしていた。 気付いた早川は、三兄弟の攻撃を何とか避けつつ、吊橋まで辿り着くが…… それは三兄弟の用意した完全な罠であった。
早川ら3人を初めから処分するつもりだったのだ。とっさに、早川は神竜と東条の身を守るべく自らの盾となり撃たれて行った…!




第32話「さらば斗いの日々、そして」

総統D、天海山三兄弟(竜山丸・竜海丸・竜天丸)

 神竜と東条を守り、自ら三兄弟の銃に撃たれていった早川は、吊橋から落ち掛ける。
 そのタイミングを機転に東条と神竜は手下を倒した。早川は吊られたロープから東条の手によって橋の上に引き上げられるが、傷だらけでよろける。 今度は神竜が手下の去り際に吊橋から落とされかける。早川は、東条に止められるのを承知で神竜を助けようとしていた。
 結果、助けられる事は出来たが、今度は早川が水流の激しい崖下へ落ちていった。 二人は止む無く、早川をそのままにしてホテル清風閣に引き上げて治療を受ける。 その時、理沙はシルベールがダッカーに取られないかと不安に陥る。

「私が、シルベールを開発したから‥‥早川さんは…」
 「誰のせいでもないさ。」

 神竜は言い切ると、シルベールを守り抜く手段を真っ先に提案する。 先ず、理沙の持つ化学合成式のメモを神竜と東条で半分づつ持つことにし、万が一、理沙に強引に聞き出される可能性を想定し、みどりと入れ替えて、オサムに理沙を守らせる事にする。

 その頃一方、早川は辛うじて陸に上がろうとするが、やはりもう身体に限界が来ており、バランスを崩し海中に落ちる。
 ホテルを出て、二手に分かれてダッカー攻略に入る。
 予想通り、オサムと理沙は、山道を通っているところをダッカーの手下に密かにつけられている。
 そして、天海山三兄弟が東条らをつけていた。

「もしもこの作戦を見抜かれていたら…」
「大丈夫だよ、絶対分からない道を通ってきているんだからさ。」

 理沙が思った不安とオサムの過信を手下は聞きつける。
 東条らは、三兄弟の放った手下に襲撃されるも反撃して追い返す。
 だが、崖中で戦っていた神竜は不意をつかれ、三兄弟に間髪無く銃弾を浴びされてバランスを崩し、崖下に落ち掛ける。 東条が駆けつけたときには、化学合成式のメモを手放し、落下していった。それを拾う三兄弟。
 一方、オサムが掴まれ理沙が連れ去られようとする瞬間、「二人の地平線」を奏でる音が。手下が見上げた山麓には‥‥‥ギターを持って奏でる早川が!  早川は、ギターを両手に従え、一句一句と区切り喋りながら、ゆっくりと近づいて来る!

「ああ……!天下の私立探偵…早川 健 様だよ……!!
 貴様たちに…散々痛めつけられて‥‥歩けないほどにされた、男さ‥‥‥!!」

 三下に言い捨てるや、ギターを持つ手を片手に変えてあっさり片を付ける早川。 だが、連戦を苦にして気を緩めてしまいふらついている。心配して、理沙とオサムが駆け寄る。
 その早川は完全に言い切る。

「大丈夫だ、どんな状況だろうと…ダッカーに負けはしない…」

だが、今度は逆バージョンが繰り出された。

「ふん、それはどうかな」
「天!」
「海!」
「山!」

とばかりに、早川を追い討ちするが如く威勢良く駆け集まってくる。

「…三兄弟!」

集合して声が一体するが、それでも、早川の性格上、毎回の口上は欠かせなく気丈に言い放った。

「貴様ら天海山三兄弟、いくら意気刈ってみせても……所詮は!
 ……日本じゃあ2番目だ」
「ふん、じゃあ日本一は?」

 お決まりのヒュウと勢い良い口笛。続いて、二本指をテンガロンハットのツバ辺りに据え、チッチッチッチッチッと振りつつ舌打ち。 ハットを上げて顔を見せてニマリと笑ったところを親指で示したが、余裕もない軽い疲労で前方に体が揺れる。

 その途端、竜海丸はマシンガン仕込の杖から刀を抜く。抜いた場面で驚く早川は、いつの間にか刀を手にしている。
満身創痍で迎え撃つが、更に竜天丸と竜山丸がマシンガンを構え、勝負中の早川に向けられている。 そこに駆けつけた東条は、一対一とは知らず、三人でかかるものと勘違いし、銃を二人に向け火を噴かせてしまう。 こうして、早川は二人のうちの片側に撃たれ込んでしまう。

 こうして、東条は神竜を失ったが、寸出の所で早川だけを救出する事に成功、一先ずホテル清風閣に戻り治療を受ける。
 復讐しない事には収まらないとばかりに起き上がろうとする早川だが、激痛のあまり身体を落とす。 ここでアイキャッチを挟みつつ、見兼ねた東条は「俺たち警察に任せろ」と言う。
 しかし後半に差しかかり、早川としても「あいにく人に任せるのは嫌いなんでね」と言い切る。 そこへ、東条の同僚刑事が資料を片手にパトカーで訪ねてくる。早川はオサムたちに任せ、ダッカー対抗の術を検討し始める。
 だがそこへオサムとみどりが慌てて駆けてくる。早川がオサムとみどりの目を盗んで脱出していたのだ!

「許せ これは俺の斗いだ 健」

と書き残して。

 岬で、「二人の地平線」を奏でる早川。見計らった三兄弟が近づいているのに気付き、ギターを止めて立ち向かったそこにはマシンガンの弾撃の嵐が。
 足場を踏み外して、早川が崖層に身体を打ち付けつつ海底へ落ちていったのを合図に、東条ら刑事は三兄弟目掛けて走る。  待ち構えた三兄弟も同じく近づいて来る。
 刑事らは三兄弟目掛けて銃を撃ちヒット!…が、びくともせず立ち尽くし嘲笑する三兄弟には、全く効いていなかった!!

「何をしている東条!? これはシルベールでできたスーツだぞ。」
「馬鹿な、やつらにどうやって作れたんだ!?」
「これで俺たちは無敵だ!分かったら、二度とダッカーの敷地内に入るんじゃねえぞ。」

 シルベールを身に纏った三兄弟は、高らかに笑い返す。東条にしてみれば、何も言えずに下を向くしかなかった。
 場面は一転、オサム一向も手下に進路をふさがれた。 その向こうからやってくるは謎の人物とそれに引き連れられる三兄弟。 謎の人物は、金庫内にしまってあったはずの黄金色のシルベールを身に纏っていた為、理沙は驚く。

「お初にお目にかかります。ダッカーの総元締・総統D!」
「総統…D!?」
「私が自己紹介する相手には、今すぐ死んでいただく人たちに限ります。」

 黄金色のシルベールを頭から全身まで纏った総統Dは、三兄弟にマシンガンを、手下に銃を構えさせた。 後ずさりするオサムたち。もう駄目かと思った2人が目を伏せようとする時、遥か彼方からエンジンが唸る音が聞こえてきた。 それはズバッカーだった。 ズバッカーが総統Dの上を通り越すや、ズバットは空中回転しズバッと向かいの山麓に降り立った。

「貴様ぁ…!」
「ズバッと参上、ズバッと解決、人呼んで、流離いの…ヒーロー!快傑・ズバァット!!」

 華麗なポーズを決めるや、今回は早々と指差し口上の構えに入る。

「首領Lを表面に立て…悪事の限りを尽くし! あまつさえ、殺人を無限に繰り広げ、世界征服を狙っていた…総統D!  …貴様だけは…絶対に許さん!!」

 ズバットが地に飛び降りるや、手下どもが一斉に飛び掛っていく。
 だが、総統Dは手下の事などお構い無く、三兄弟にまとめて撃たせてしまう!硝煙が晴れるや、手下は気絶しているがズバットと三兄弟、総統Dは既に居ない。その現場へ辛うじて東条は駆けつけ、理沙やオサムたちと合流するやズバットを追いかける。
 ズバットは、総統Dの指示通り動く三兄弟から大砲タイプのマシンガンをぶっ放され、爆風を浴び続ける…。今まさに、シルベールよりも弱いズバットスーツを早川ごと粉々にされようとしていた。爆風をまともに喰らい、倒れこもうとするが、それでも歩き突き進む……!!

「ズバットめ、粉々に成りおったわ!」
「われわれ三兄弟に、敵う者など居りませぬぞ!」

 10発も放り込んだところで、威張り、勝ち誇った4人。だったが、荒れ荒ぶ硝煙のなかからズバッカーが出現、ズバットも燦然と空中回転して無傷で姿を現す。驚きの顔を見せる三兄弟。

 再びズバッカーに搭乗するズバットを見るや、三兄弟はマシンガンで乱戦するが、ジェット推進を利用して銃弾撃を跳ね返す。
 しかし、総統Dは一人、三兄弟を利用して崖に追い込みズバッカーを封じる作戦に懸かり始める。 作戦に嵌るとは知らないズバットは、Dの望むよう、吊橋方向に三兄弟を走らせてわざと追い込んでいるつもりで居た。 その途中、神竜が居ない事に不審を抱くズバット。
 三兄弟はついに、吊橋に一直線に並んでしまった。そこへ更に、ズバットはシルベールを身に纏っていない首より上に目をつけていた!
そして十字剣から狙うかのように伸びる鞭が、三人の首を同時に締め付けてしまった。 橋上で首ごともがき引きずられる三兄弟は足首を滑らせて落ちかける。 ようやく、ズバットの鞭が外れかけたその時には、今度はロープで足首を締められ逆さ釣りにされ、更にズバットに括り付けられながらも『ダッカー極悪三兄弟 ご覧の通り』 と書かれたズバットカードを添付される。

 その数十秒後、東条が駆けつけてくると、吊橋に逆さにされている三兄弟を発見。 だが、東条はズバットの限界が残り40秒しかない事を安堵する。
 一方、総統Dを崖に追い詰めたズバットは、ズバッカーを崖より前に乗り捨てる。が、総統Dは既に完全に橋を切り落とし逃げ切った。対岸で睨み合う総統Dとズバット。

「二月二日、飛鳥五郎を殺したのは貴様だな!」
「……そうとも………! 奴は‥‥私の正体を見破ったのでな…!」
「俺も、貴様が誰だか分かった!シルベールの作り方を憶えられたのは、貴様しかいない!!」
「だが、死んでは言う事も出来まい。」

 こうして、ついに

「ズバァーット!」
「ダッカー!」

の掛け声で、因縁の対決は始まった!
 早速、鞭が総統Dの腕を絡めとるが、その相手の方が上手だった。
 反動を利用されてズバットの方が宙に浮き、総統Dが居る崖の方へ倒れ込む。 直ぐに起き上がって態勢を立て直すが、ここでついにズバットスーツの限界時間を越えてしまう。 さらに総統Dはマシンガンより強力な光線砲を構えて放ってくる。
 だが、ズバットは光線を寸出のところで避け、スーツの部分的にすれすれで当ててツギハギにすることで、鉛化をなんとか解除する。 しかし、その瞬間を突かれダッカーキックを喰らい、沈む。それでも、ズバットは総統Dの顔面に拳を浴びせる。 やがて、崖上で掛声と打ちあいの威勢のいい音が木霊し合い、どちらか一方の倒れるまで接戦となったのだ………!!
 だが、武芸百般の早川からしては、普通のぶつかり合いでは埒があかないと判断する。 なんと、ズバットスーツを自ら取り外し破り捨てたのだ。一瞬、動きを止めるD。

「臆したか!貴様!」
「いやぁ…ただの打ち合いなんて、野暮な真似はしたくないのでね…。」

 ここで、総統Dに対し、ひゅうと口笛を吹き、テンガロンは無しでチッチッチッチッチと舌打ち!総統Dは撃つのをやめる。

「貴様ぁ…一体どういうつもりだ!」
「なぁに簡単な事だ。互いの一撃のどっちが…上かって事だ。神竜…!」
「よく言うぜ、早川…!如何にも、お前と張り合うためにダッカーを作ったわけじゃあ…無いしな。」

 役を演じていた神竜は、素の声で頷くと構えに入る。早川も、腰を下げるか…と思いきや、構えるどころか立ったままだった。

「どこまでもフザケた野郎だな、早川! 飛鳥から聞いていたお前とは、どこかが違う! お前が日本一だとは思えん!」
「…(フュ〜〜〜♪)…美化しすぎると…負けるってモノさ。」
「………そう出るか!」

 さり気無く両手を肩にとめ、首を振る早川の姿。 黄金色のシルベールを纏った神竜こと総統Dは、右拳を一瞬で繰り出す。これを両手でがっちり受け止める早川。
 早川の顔と腕が最高に熱くなったのをみた総統Dは、振り払おうとも、逃げようともせずに飛び掛ってくる腕を避ける構えに入るが、それは遅かった。 早川の素早い右腕が神竜の右腕を奪い、もう片腕が神竜の左腕のスーツを捕まえつつ腰を落とし、岩目掛けて投げつけていた! 更に、そのシルベールの頭へ早川の肘打ちが強烈にヒットした。

「飛鳥の恨み、思い知れ!!」
「シルベールは…完璧じゃ……なかった…のか……!」
「幾ら、外部からのダメージを吸収するとは言っても…それは瞬間的なものさ。着込んだ中の人間が、内部的な衝撃に耐えられればの話だ。それが、シルベールの弱点だ!!」
「…そうか……。……許されるものじゃない…」

 伏せるシルベール姿の神竜。対し、前の立ちはだかった早川に縋ろうという気は無く、顔を伏せたまま語る。

「殺すなら殺せ!これで、ダッカーは…終わりだ……!!」
「ただし!その黄金色のシルベールは…お前の…墓標代わり…! …役目を果たしたモノほど…お前に相応しい……!」

 言い切った早川は、合意の下でもう一撃を食らわそうとしていた。 だが、既にその時には「終わりだ」のその一言を最後に息絶えていた。しかし、早川として殺してしまった人間であることから、ズバットカードを添付するつもりは無かった。このまま、ズバットスーツは捨て去ったままで無言で立ち去る早川。


 数分後、ズバットの安否を心配した東条・オサム・みどり・理沙の4人は、崖上に辿り着いた。
 そこには、総統Dの遺体とズバットスーツの脱いだ跡を発見する。 遺体から、シルベールの頭部を外す東条だったが、ついに、4人とも総統Dの正体が神竜伸介だったことを知ってしまう。
 東条は全てを察した。

合成式のメモを破った時に記憶し、山岳から落ちる振りをして、また、理沙が金庫を開けるとこを見た人物でなければ出来ない事

だと気付いて。
 しかし、肝心のズバットの姿もなく、ズバットスーツの脱ぎ跡を見た4人。破り脱ぎ捨てた方向が崖外れにあった為、ズバットが崖から落ちのではないかと早合点したのだ。

 その頃、当人の早川はいつもの黒革のテキサスジャケットを着て、形見のギターを片手に飛鳥の墓参りをしていた。

「飛鳥…お前の仇は取ったぜ。」

と、言い残しながら『悪の大組織ダッカー壊滅!!』のズバットカードを花束と共に掲げ、ズバット十字剣を捧げる。墓標に背中を向け去っていく。
 直後、痛感の思いで花束を持って墓参りに来た東条ら4人は、思いもがけないシーンを目にする。  ズバットカードだ!オサム・みどり・理沙の3人は喜ぶが、東条は訝しげに言う。

「ズバットは…ズバットは生きていたんだね!」
「…やったな……早川!」
「え?ズバットって早川さんだったの?」

 「快傑ズバット=早川」であることを知った一同は、改めて墓参りをし祈りを捧げていた。
 その頃には、「男は一人道を行く」をバックに流しつつ、早川は何処ぞへとふらりと消えて行くのだった………!!



考察・神竜伸介とは

   この人物について、31・32話の中だけではふと疑問に思われる部分がある。
そもそも、この人物は1クール目の初話(あるいは、その以前)で飛鳥に正体を見られたからと後述しているが、その問題のシーンはどこにあるのだろうか?
これについて、2クール以降から総統Dの存在をほのめかすような、伏線と思われるシーンがいくつかあったので、幾つか紹介してみる。

 ここまで来れば、大抵の人間はクレジットに記述されていようといまいと、ピンと来るはず。

 しかもこの神竜の出てくる31話で、最大のポイントが数箇所出てくる。
  1. 先ずは、神竜の登場の仕方 … 何故、老人の姿をしていたのか?
     ⇒ ダッカーの重要幹部が顔を知っているため。特に、日本一勝負をした竜山丸には鉢合わせ出来ないはず。
  2. 何故、早川の名前はともかく、亡き飛鳥の友人である理沙のことまで言い当てたのか?
     ⇒ 東条の中学以来の親友かつ、国際秘密警察の第一線ならば、容易に情報をコンピュータで収集可能。
     ⇒ 自らが集団を“ダッカー”と呼んでいた点も見逃せない。
  3. 神竜の腕の弾痕から出てきた弾を何故、早川と確認させたのか?
     ⇒ 首領Lが自ら、本当に神竜に打ち込んだとしたら、首領Lは総統Dの素顔を見た事が無いことになるはずだ。
        さらにこの時点で、総統Dのことは話にしていないとなれば、自作自演ではと疑いをかける。
  4. 国際秘密警察の第一線というだけで、どうやってダッカー本部の見取り図を調べ上げたのか??
     ⇒ ダッカーの内部の人間でなければ、細かい詳細など知る由も無いはず。
  5. ズバットが首領Lを締め上げる際に、「やったのは総統Dだ」と言うが・・・
     ⇒ 素顔を知らないような総統Dのことを持ち出した途端、竜山丸が仕留めている。詮索されないように口を閉ざさせたのだろう。
        ならば、総統Dが神竜であることを知る人物であると疑いを掛ける事になる。
 そう。つまり、上記三つの話数に刑事…(特に東条)の絡んだ話と推定して、令香以前にも何人かスパイを入れていたとしか考えようが無かった。
 が、それだけではなく、31話だけで5つの「事実」を振りまいていたとなると…。間違い無く、ダッカー側の人間が東条たち刑事側にいる事だろう。
 その人物こそが、国際秘密警察の第一線で活躍する神竜…今までの伏線を張っていた人物にこそ他ならない…
こう、他ならないが、早川は「シルベール(の組成メモ)を覚えられる事が出来たのはお前だけだ」で一瞬で片をつけた。
さすがは洞察力も日本一の私立探偵早川 健!御見事!!

そして・・・(構想中)

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